Interviewインタビュー

『錦秋特別公演 2016』
中村 七之助さんインタビュー

「錦秋特別公演」をきっかけに歌舞伎をより身近に感じてもらえたら

中村勘九郎さん、中村七之助さんを中心に中村屋一門が行う巡業公演「錦秋特別公演」。今年で11回目を迎える同公演は、いろいろな演目を取り上げながら、2005年から毎年欠かさず全国各地で実施されている。今年は東京を皮切りに全国14ヵ所で11月に開催され、関西公演は大阪・ NHK大阪ホール(13日)と京都・ ロームシアター京都 メインホール(14日)。今回の演目は、歌舞伎の舞台裏を解説する初の試み「歌舞伎塾(立役、女形ができるまで)」と、七之助さんによる「汐汲(しおくみ)」、勘九郎さんによる「女伊達(おんなだて)」が上演される。公演に先立ち、七之助さんに今回の見所や意気込みについて話を伺った。

―まず、錦秋特別公演を始められたきっかけを教えてください。

昔に親子会というのを行っておりまして、そのままの流れもあるんですけど。地方の若い方から「歌舞伎には興味があるんですけど、観に行くには交通費・チケット代・ホテル代がかかってしまうから、なかなか行けない」というファンレターをいただきました。ほかにもそういったファンレターは多かったんですよね。じゃあ、僕たちから行こうか、というのが始まりです。この2人で10年ちょっと、やらせていただいています。

―毎年、工夫を凝らした公演をされていますが、今回の見所は?

今回は「歌舞伎塾」という新たな試みを企画しています。今までは、芸談という形でトークをして、お弟子さんたちの踊りがあって、僕たちが踊るというものが定番だったんですね。でも今回は、ただトークをするだけではなく「立役・女形ができるまで」をテーマに、歌舞伎の舞台はどのようにしてできているのか、その舞台裏をお客様に生で観ていただきたいと思っています。皆さんの前で実際に中村鶴松と中村いてうの2人が顔を作る(化粧する)過程を披露し、顔ができたら頭を被って衣装を着て、「草摺引(くさずりびき)」をひとくさり踊るところまでを一連でお見せします。そのほかにも、歌舞伎の効果音や約束事などを解説しながら進行しようと思っていますし、客席に僕たちが降りて質問コーナーや効果音のクイズなどをやってみても面白いかなと思っています。以前にも女性のお客様を舞台にあげて「見得(みえ)」を教えたりしたこともあったんですよ。恥ずかしいとは思うんですけど、なかなかできない体験なので、こういうことをきっかけに、歌舞伎をより身近に感じてもらえたら嬉しいなと思っています。これは今回が初の試みですので、僕自身も楽しみです。

―質問コーナーはいつも設けていらっしゃるとお聞きしました。

コミュニケーションを図って、お客様との距離が近くなればいいなと思ってやっています。歌舞伎のことだけではなく、「結婚はいつですか?」とかプライベートなことを聞かれることもあります(笑)。あと、僕たちは毎回お客様に美味しいオススメのお店を聞いているんですよ。いつも兄弟で本当に行っているので、今回もぜひ教えていただきたいですね。地方によって反応も様々ですし、こちらとしてもやっていて楽しいです。

―今回「歌舞伎塾」をやろうと思ったきっかけを教えてください。

前に一度だけ、別の公演でこういうことをやらせていただいた時があって、その時に好評だったからということと、錦秋特別公演は「この公演で初めて歌舞伎にふれた」と言ってくださるお客様が多くて。歌舞伎をあまりご存知ない方からすると、いくら中身がわかりやすいお芝居だとしても、漢字で書かれた演目を見ただけで難しく感じてしまったり、何の演目から観ればいいかなどわからないと思うんですよね。「歌舞伎ってこういうもんなんだ」「そんなに難しくないんだ」ってより身近に感じてもらうきっかけにしたいなと思い、このような企画をやらせていただくことになりました。

―演目「汐汲」「女伊達」についても見所を教えてください。

舞伎の中でも「汐汲」「女伊達」はすごくメジャーな踊りです。僕が披露する汐汲は、日本舞踊を習ってる方が最初の方に習うであろう基礎中の基礎で。能の「松風」の趣向を取り入れたしっかりとした踊りから、恋愛のしっとりとした踊りまであり、初めてご覧になる方にもわかりやすい踊りになっています。玉三郎のおじさまと以前2人で踊らせていただいたこともある演目なんですが、その時にいろいろ勉強させていただいたので、そのことを復習して精一杯やりたいと思っています。兄が踊る女伊達は、男勝りな女性が2人の男性を相手に立廻りを繰り広げる華やかな舞台です。兄が女形で踊るのはとても久しぶりだと思うので、そういう意味ではレアかもしれないですね。

―ファンレターがきっかけで始められてから10年以上が経ちますが、ファンの方々やご覧になった方々からの反響はいかがですか?

「この公演を観て歌舞伎が好きになりました」など嬉しいお言葉を多くいただいております。僕たちだけでなく、たくさんの素晴らしい役者さんたちが歌舞伎をやられています。そこで好きな俳優さんを見つけて、歌舞伎に少しでも興味を持ってもらっていただけるとすごく嬉しいですし、この公演をやってきた意味があったなと感じますね。歌舞伎は、楽曲だけでもたくさんある上に演目もたくさんあって、ジャンルが広い。今ではあまり上演されてなくても素晴らしい踊りはたくさんあります。そういったものや、中村屋に縁があるものを積極的にやっていきたいですね。

―その土地によって観客の反応も違うとおっしゃっていましたが、関西の公演で印象に残っていることはありますか?

大阪の松竹座で玉三郎のおじさまと踊らせていただいた時に「あぁ綺麗やわぁ、何食べてはるんやろぉ」って言われて。「大阪の人はそこも食べ物に結びつけるんだな」って思いましたね(笑)。他県と大阪の人との違いでいうと、大阪の人は言葉が出ますよね。観ながら「綺麗」だとか「素敵」だとか言ってくださって。やっている僕たちからしてもそれはすごく嬉しいですね。その時は玉三郎のおじさまも舞台袖で「嬉しいね、皆さんがいろんな言葉をかけてくれて」って言っていました。その後に歌舞伎座(東京都)でやったんですけど、皆が静かに観てるから逆に不安になってきちゃって(笑)。東京のお客様が悪いとかでは決してないんですけど、こっち(大阪)でやっちゃうとやみつきになるというか。父も大好きな街でしたし、やはり面白いものに対しての熱量が皆さんすごいですよね。江戸時代では屋号を言ったり「かっこいい!」「でました!」などの言葉をかけながら観ていたんだと思いますし、歌舞伎って、本当はそうやって観るものなんですよね。「引っ込め!」とかの罵声もあったんでしょうけど。その歌舞伎の良いところを引き継いでいかないといけないなと思いますね。歌舞伎は「温故知新」という言葉が1番似合う演劇なんじゃないでしょうか。

―最後に意気込みをお願いします。

1人でも多くのお客様に笑顔で帰っていただきたいと思っております。そして、京都での公演は今回が初めてですので、南座とは違った雰囲気を楽しんでいただければと思いますね。過去には歌舞伎の本公演ではやらないような舞踊をあえてやってみたり、今回も初めての企画をやったりと、錦秋特別公演ではいろいろなことに挑戦させてもらっています。これからも、初めて歌舞伎をご覧になる方にわかりやすいことを意識しながら、いろんなことに挑戦していきたいと思っております。

Profile

<中村 七之助>
昭和58年5月18日生まれ。十八代目中村勘三郎の次男。昭和61年9月初お目見得。翌62年1月二代目中村七之助を名乗り初舞台。現在は舞台以外にBS-TBS『美しい日本に出会う旅』でナレーションを担当。

Storyストーリー

中村勘九郎 中村七之助『錦秋特別公演 2016』

【出演】中村勘九郎 中村七之助
【演目】一、都風流  ニ、芸談  三、月の巻  四、紀州道成寺

中村屋がお贈りする好評のシリーズ公演

各プレイガイドにてチケット発売中

中村勘九郎 中村七之助『錦秋特別公演 2016』の公開情報

大阪公演 2016年11月13日(日)11:00開演/15:00開演
NHK大阪ホール
(大阪府大阪市中央区大手前4丁目1番20号)
京都公演 2016年11月14日(月)11:30開演/15:30開演
ロームシアター京都 メインホール
(京都府京都市左京区岡崎最勝寺町13)
料金 S席 8,500円 A席 7,000円(全席指定・税込)
問い合わせ キョードーインフォメーション TEL 0570-200-888(10:00〜18:00)

「錦秋特別公演 2016」公式サイト http://kinshu2016.com/