Interviewインタビュー

ミュージカル『マイ・フェア・レディ』
寺脇 康文さんインタビュー

"自分がこの世界で果たすべき役割は
観ていただいているお客様の明日の元気を作り出すこと"

オードリー・ヘップバーン主演の映画版も印象深い、ミュージカル『マイ・フェア・レディ』がついに再演。軽妙な掛け合いで彩るシンデレラ・ストーリーの王道作品で、下町の花売り娘イライザを貴婦人へと導く言語学者ヒギンズを演じるのは前回に引き続き寺脇康文さん。作品の魅力や役者の仕事にかける思いを伺った。

―チームワークの合った掛け合いがこの作品の魅力のひとつですが、稽古場の様子はいかがですか?

演出のG2さんは雰囲気が柔らかく、楽しく稽古を進めてくれますが、みんなが野放図にだらけるのではなく、厳しさの中にも細かな優しさもあるので非常にやりやすく、色々なことを試せる場になっていますね。松尾(貴史)さんや田山(涼成)さんはベテランならではの色んな技を繰り出してきますし、僕も地球ゴージャスで培ったものを笑いの部分として入れさせてもらっています。霧矢(大夢)さんも真飛(聖)さんも宝塚歌劇のトップスターとしてやってきた風格があり、臨機応変さもありますので、色んなディスカッションをしながら建設的に稽古場は動いているという感じですね。

―霧矢大夢さん、真飛聖さんがWキャストで演じるイライザのそれぞれの魅力は?

お2人とも本当にまったく違うイライザですね。霧矢さんは男気があって芯のしっかりした、ぶれない感じのイライザ。対して真飛さんは幼い女の子のような、男がほっておけない柔らかな魅力を持っています。全く同じセリフでやっていても、人が変わればこちら側から出るセリフが変わるんですよね。霧矢イライザに対するセリフの言い方と、真飛イライザに対するセリフの言い方とはまったく違ってきますし、動きも多少違いますからこちら側からすると非常に新鮮ですね。1日2回の公演でも違う芝居をしているような気分になります。まったくタイプが違って、それぞれが魅力的な2人のイライザを、もしお時間が許すのならば両方見ていただきたいですね。

―ヒギンズとイライザのやり取りはもどかしくやきもきしてしまいますね。

ヒギンズは言葉遣いをすごく大事にしている反面で、人の気持ちがわかっていない。イライザは言葉遣いはめちゃくちゃだけど人の気持ちをわかっている。両方の考えが最初はかけ離れているけれど、お互いに影響されて変わっていくんですね。イライザは言葉を習って良いものを着て良い立ち振る舞いをして「やったわ」と思うんですが、本当に大事なのはこれじゃないということに気づいていくし、ヒギンズも言葉遣いも態度も良くなったイライザだけど、だからイライザが好きな訳じゃないんだと気づいていく。やっぱり大事なのは人間の持つ本質なんだということがテーマだと思うんですね。言葉をちゃんと喋れと言いながら、でも本当に大事なのはそれじゃないということが最後にわかってくるんです。

―長い歴史のあるこの作品で訴えかけたいことは?

どの時代であろうとも人間は生きているうちに成長して、何かしらワンランク上に行きたいという欲があると思うんですね。その本質は古臭さも無くお客様の心に届くんじゃないかと思っています。本気で思えばできるんだよということ。大切なのは見た目ではないということと、何か人間としてレベルの高いところに行きたいという気持ちを持っている人には心に響くんじゃないかと思いますね。そんなことを言いながらも、単純に笑ってハラハラやきもきしながら「何やってんのこの2人は!」って思いながらも最後には「ああ良かった」って楽しく帰っていただければそれで十分なんですけどね。

―魅力的な楽曲が多数ある今作ですが、特に印象的な曲は?

イライザが歌う「じっとしていられない」もイライザの父親のドゥーリトルが歌う「教会へは遅れずに」も2曲ともとても有名ですよね。ヒギンズが歌う歌は初演から今まで歌というよりもセリフで表現してきているんです。音符通りに歌うヒギンズは多分僕が世界初だと思うんですよ。様々な資料を見ても、なぜかみんな喋っているから僕は歌いたいと思って。なぜ語りになったのかはわからないですが、最初にやった方が「歌はいらない、セリフでやる」って言ったのが踏襲されているのかも…?

―作品との出会いはやはり映画版から?

そうですね。豪華な衣装とセットに彩られ、人間ドラマでありながらどこか現実離れした夢物語という印象でしたね。同じオードリー・ヘップバーンさんの主演作品でも『ローマの休日』は、好きでも最後は立場の違いで一緒にはなれない2人がいるという悲しい終わり方です。でもこの作品は映画では描かれなかった舞台ならではの結末で、良い気持ちで帰っていただけると思いますね。

―ミュージカル版は、より明るく楽しい気持ちで観られる作品になっているんですね。

やっぱりハッピーエンドじゃないと。辛いことは現実にいっぱいあるから、お金を出して足を運んで観る夢の世界なら良い気持ちになってもらいたいんですよね。どんな作品でも悲しいストーリーでも、最後はひとつの光によって心が洗われるような、「良い気持ちになれたし、明日自分のことも頑張ろう」と思ってもらわないと!暗い気持ちで帰ってもらってもしょうがないですからね

―役者という仕事の意義がそこに感じられますね。

映像の仕事だとなかなか直に反応をいただけないのですが、舞台はそこにお客様がいて、笑って泣いて真剣に観ていただいている張り詰めた雰囲気がすごく伝わるんですね。最後に拍手をいただいたときに、「ああ、自分の生きている意味はここにあるんだな」って、自分がこの世界で果たすべき役割は観ていただいているお客様の明日の元気を作り出すことだと思える瞬間が毎回あるんです。逆に僕もお客様に力をもらっているし、お客様が入っていただいて初めて100%に近いものになるんです。劇場に入る人数というのはテレビの視聴率0.1%と比べてもすごく少ないですけど、そのエネルギーというものは負けてないですね。舞台は映像のように後に残らない分、心にダイレクトに届くのではないかといつも思ってやっています。本当に面白くないと拍手はしていただけませんから、双方が相乗効果で幸せな気持ちになるのが本当に成功した芝居だなと思いますね。

―読者にメッセージをお願いします!

毎日毎日ニュースを見ていても胸が苦しくなるような悲しい出来事があるこの現実の中で、せっかく観ていただくんですから、現実を忘れて皆さん次の日の生活に力を蓄えていただけるような作品を目指して頑張っております。難しいことも何も無く、本当に楽しい3時間を感じていただければ幸いです。ぜひ、劇場で一緒にエネルギーの交換をしたいと思います。よろしくお願いします。

Profile

<寺脇 康文>
1962年2月25日生まれ。84年に三宅裕司主宰の劇団スーパーエキセントリックシアターに入団。94年に岸谷五朗と演劇ユニット地球ゴージャスを結成し、定期的に公演を行っている。ドラマ『相棒』シリーズ(〜08)や映画『殿、利息でござる!』(16)など、舞台、ドラマ、バラエティ番組など多くのジャンルで活躍。7月からWOWOW連続ドラマW『希望ヶ丘の人びと』が放映中。

Storyストーリー

ミュージカル『マイ・フェア・レディ』

【出演】霧矢大夢/真飛聖(Wキャスト)、寺脇康文、田山涼成、松尾貴史、寿ひずる、水田航生、麻生かほ里、高橋惠子 ほか

オードリー・ヘップバーン主演の映画版も印象深い、ミュージカル『マイ・フェア・レディ』がついに再演。

ミュージカル『マイ・フェア・レディ』の公開情報

大阪公演期間 2016年8月20日(土)~22日(月)
キャスト 霧矢大夢/真飛聖(Wキャスト)、寺脇康文、田山涼成、松尾貴史、寿ひずる、水田航生、麻生かほ里、高橋惠子 ほか
会場 梅田芸術劇場メインホール
(大阪市北区茶屋町19-1)
料金 S席12,500円、A席9,000円、B席5,000円(全席指定・税込)
※25歳以下 7,000円(当日引換/要証明書)
関連イベント ★8月20日・21日アフタートークショー開催!
20日15:00公演終了後:参加者/真飛 聖、田山涼成、高橋惠子
21日17:30公演終了後:参加者/霧矢大夢、松尾貴史、水田航生
問い合わせ 問い合わせ:梅田芸術劇場メインホール
TEL 06-6377-3800 http://www.umegei.com/