Interviewインタビュー

映画『小さいおうち』
松 たか子さん インタビュー

“「時子さんってどんな人かな?」と想像しながら、演じていました。”
直木賞受賞のベストセラー小説を、『男はつらいよ』シリーズをはじめ多数の作品を手掛ける山田洋次監督が映画化した『小さいおうち』。50年を超える監督人生のなかで“家族の絆”を描き続けてきた山田監督が、今作で初めて“家族の秘密”に迫る。主演を務めた松たか子さんは、山田作品には『隠し剣 鬼の爪』以来10年ぶりの出演。

公開直前の今のお気持ちをお聞かせください。

山田監督:2013年の3月にクランクインして、ようやく完成して、今年封切りということになって、この一年間はずっとこの映画だったなあと今しみじみ思い返しています。やれることはやったと思うし、大勢の俳優さんに懸命に芝居をしていただいて、スタッフも「やれるだけのことはやった」という充足した思いを抱いていると思います。

松:いよいよ公開が近づいて、どんなふうに見ていただけるのか緊張していますが、本当に楽しみに公開を待っているところです。ぜひ一人でも多くの方に見ていただければいいなと思っています。

監督が原作の中島京子さんに、直接手紙を出されたと伺いました。

山田監督:原作がある場合、最初は自分でお願いするのが筋だと考えていて、なるべくそうしたいと思っているんですね。特にこの作品は、直木賞受賞作品ということもあって、ひょっとしたらもう映画化が決まっているんじゃないかなっていう心配もあったものですから、慌てて映画化の許可をいただく手紙を中島京子さんに出したんです。そうしたらすぐに、「映画化はまだ決まっていませんので、よろしくお願いします」というお返事をいただきました。

原作のどこに惹かれたのでしょうか?

山田監督:僕は少年時代に舞台となる昭和10年代の東京で過ごしているんですが、実に正確というか、中島京子さんは戦後生まれの方なのに、よくこんなことをこの人は調べたなというくらい間違いがない。昭和10年代の東京の暮らしというものがまざまざとそこに表現されていたことにまず惹かれました。山形県から上京してきた初々しいタキという女中さんが見て、そして体験した時子奥様の身に起きた事件は、彼女にとっては幾晩も眠れないくらいの驚天動地の大事件だったんですね。この昭和10年代の東京のある郊外の片隅の小さな家のなかで起きた大事件を、僕はこの映画で描くんだと思いましたね。つまり、タキの小さな目のなかをじっと見つめるとそこに、この子の大きな驚きと当惑と驚愕。そして彼女を包み込む東京と、さらにいえば日本と、さらにいえば世界。この年代全般の人類の歴史すら感じ取れるような映画になれば良いなと思いながら脚本を作りました。

松さんは、どのように時子を演じましたか?

松:つかみどころのない女性ですよね。でも、その時子の中にタキちゃん(黒木華)が色んな興味や憧れを見出せるような、そういう存在になっていなければいけなくて、もちろん板倉青年(吉岡秀隆)にも好きになってもらえるような女性でもいなきゃいけない。もう、どうすればそうなるんだろうと悩みながら。

山田監督:どうしなくてもいいよ、そのままでいいよ(笑)

松:(笑)山田監督や華ちゃんや吉岡さんに「お願いします、そう思ってください」と念じるような気持ちで望みました。私が具体的にできることは結局何もないなと。「時子さんってどんな人かな?」と想像しながら、思いながら演じていました。

昭和10年代の女性を演じるにあたって、今と言葉遣いや所作も違うと思うのですが参考にされたものはありますか?

松:撮影前に昭和パートの出演者が集まって読みあわせをしたときに、山田監督が「持てる知識を総動員して想像して欲しい」とおっしゃられたんです。だから、私もそんなに数多く色んなものを見てきたわけではないんですけど、でも「こういう風に着物を着ていた人がいたな」とか、「仕草はこんな感じだったかな」とか、色んな欠片を思い出して集めてやりました。特に何かを参考にっていうことはなかったですけど、しいて言うならば母や祖母など、着物を特別扱いせず日常着として着ていた人たちの姿を思い出して。あまり所作だけが目立たないように気を付けるというか、そういうものを伝える映画じゃないと思うので、自然に見えるように演じていました。

Profile

<マツ タカコ>  
1977年東京都出身。
93年「人情噺文七元結」(歌舞伎座)で初舞台。翌94年NHK大河「花の乱」でテレビデビュー。以降、映画や舞台などに多数出演。97年より音楽活動も行う。2月より舞台「もっと泣いてよフラッパー」に出演予定。

Storyストーリー

©2014「小さいおうち」製作委員会

小さいおうち

【原作】中島京子「小さいおうち」(文春文庫刊)
【監督】山田洋次
【出演】松たか子/黒木華/片岡孝太郎/
    吉岡秀隆/妻夫木聡/倍賞千恵子

昭和11年。田舎から出てきた純真な娘・タキ(黒木華)は、東京郊外に建つ少しモダンな、赤い三角屋根の小さなお家で、女中として働きはじめた。そこには、若く美しい奥様・時子(松たか子)と旦那様・雅樹(片岡孝太郎)、そして可愛いお坊ちゃまが、穏やかに暮らしていた。しかしある日、一人の青年・板倉(吉岡秀隆)が現れ、奥様の心があやしく傾いていく。タキは、複雑な思いを胸に、その行方を見つめ続けるが―。

小さいおうちの公開情報

公開 1月25日(土)
原作 中島京子「小さいおうち」(文春文庫刊)
監督 山田洋次
出演 松たか子/黒木華/片岡孝太郎/吉岡秀隆/妻夫木聡/倍賞千恵子
劇場 神戸国際松竹 ほか
公式サイト http://www.chiisai-ouchi.jp/