Interviewインタビュー

映画『つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語』
行定 勲監督 インタビュー

“男女のぐちゃぐちゃな恋愛の顛末を笑って下さい。”
直木賞作家・井上荒野の同名小説を映画化した『つやのよる』が1月26日(土)に公開される。
メガホンを取るのは『GO』(01年)で一躍脚光を浴びて以来?数々の名作を手がける行定勲監督。
“艶”という名の妻を看病する夫の松生春二(阿部寛)が、妻と関係をもった男たちに危篤を知らせていくことで、翻弄される男女の姿を描く。
「これまでには無い新しい形」と自負する、愛の常識を変える大人のための群像劇が誕生した。

井上荒野さんの原作に惹かれた部分とは?

荒野さんの小説は、饒舌ではないんですよ。文学として崇高なんです。ほとんど状況しか書いていなくて、感情が書かれていない。これをそのまま映画にしたいと思ったんですよ。でも、作品を読んでいると色々なことに思いを馳せて、色々な場面が浮かんでくる。淡々としている原作の中に“行間”があって、そこからポンと映画的な場面が飛び出してくるというか。描かれていないところから、そういう場面を見出させる力があったんですよね。映画を作るときは「クリエイションしている」という感じでした。

女性の愛の形や生き様を撮ることに対して難しさを感じましたか?

はい。この物語では全員が主役で、それぞれが送ってきた生活や歴史をかなり作りこむ必要があって、女優たちに手紙を書いて説明しました。あとは、役者個人が出してくる言葉や感情、理解ですね。それぞれが一様にして『私はこんな(演じている役のような)女ではありませんが、理解はできる』と言っていました。演じる者の表情や肉体が加わると「この役はこういう人間なんだ」ということが見えてくる。愛の形が観客に伝わらなければ成功とは言えないので、そういう意味では女優に重要な部分を担っていただいたと思います。

監督自身からみて、松生の愛情表現はいかがでしょうか

羨望しています。あんな風に人を愛し抜けないでしょうね、僕はどちらかというと、その周辺にいる男たち(の気持ち)はよく理解できたんです。松生はやや女性寄りなんですよね。とは言いながら、娘と奥さんを捨ててはいますけれど。でも、艶に対しては違って、最後まで愛し抜きました。彼の愛の貫き方を尊敬していますし、他の登場人物たちも初めは敵対していたはずなのに、次第に松生に共感していくんですよ。

ラストシーンの松生の表情が非常に印象的でした

もうね、阿部寛っていう男はすごい俳優なんですよ。松生そのものでしたね。セリフを間違えていてもまさに松生だから気付かないくらいの感じで(笑)。
映画が完成してから、松生はどういう気持ちだったのかと阿部さんと2人で語り合ったんです。すると『艶のことが自慢だったんですよね』って答えたんですよ。
だから、ラストシーンの表情がまさにクレイジーケンバンドの主題歌(こんな風に愛し抜けたから)『ま、いいや』になっているわけで。この映画は“恋愛の多様性の映画”なんです。(作品を観て)「わからない」と言ってしまうのは簡単ですが、そうじゃないんです。わからなければ客観的に見る、そこに身をおいてみる、考えてみる。そんなに難しくないんです。人事のように笑ってくれればそれでいいんですよ。

Profile

<ユキサダイサオ>
1968年生まれ、熊本県出身。『OPEN HOUSE』(97年)で長編劇場映画デビューを果たす。主な代表作に、『きょうのできごと a day on the planet』(03年)、『世界の中心で、愛をさけぶ』『北の零年』(04年)、『春の雪』(05年)、『クローズド・ノート』(07年)、『遠くの空に消えた』(08年)、『パレード』『今度は愛妻家』(10年)など。

Storyストーリー

©2013「つやのよる」製作委員会

つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語(R15+)

【監督】行定勲
【脚本】伊藤ちひろ/行定勲
【原作】井上荒野『つやのよる』(新潮文庫刊)
【出演】阿部 寛/小泉今日子/野波麻帆/風吹ジュン/真木よう子/忽那汐里/大竹しのぶ ほか

男を魅了してやまない謎の女“艶”。昏睡状態にある彼女の夫・松生春二(阿部 寛)は、奔放な妻の不貞に悩み続けながらも、彼女から離れることができずにいる。そこで彼は、過去に艶と関係した男たちに彼女の危篤を告げていくことにした。ところが、その知らせが、彼らの妻や娘、恋人、愛人たちに予期せぬ波紋をもたらすことになり―。謎の女・艶に翻弄される男と女の愛の群像劇。

つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語(R15+)の公開情報

公開 1月26日(土)よりOSシネマズミント神戸ほかで公開
監督 行定勲
脚本 伊藤ちひろ/行定勲
原作 井上荒野『つやのよる』(新潮文庫刊)
出演 阿部 寛/小泉今日子/野波麻帆/風吹ジュン/真木よう子/忽那汐里/大竹しのぶ ほか
公式HP http://tsuya-yoru.jp