Interviewインタビュー

料理研究家コウケンテツさんインタビュー 料理研究家コウケンテツさんインタビュー

「母のいる台所にみんなが集まって喋ったり、料理を作ったり。それが家の中心だったし、当たり前で一番楽しいことでした。」

爽やかな笑顔と楽しいトークで魅了する、大人気の料理研究家コウケンテツさん。料理や家庭に対する思いやライフスタイルなど、編集部独占でお話を伺いました。

―料理研究家になるきっかけは?

僕は19歳ぐらいまでテニスに力を入れていたのですが、ケガのため挫折してから、やりがいある仕事を求めて職を転々としていました。そんな時、忙しい母の料理教室の手伝いに借り出されたんです。料理教室を見て、あらためて「料理の世界って凄いな」と思いました。料理の技術とか素材のことだけを教えるのが料理教室だと思っていましたが、母はさらに、その料理にまつわるバックグラウンドや、何故この料理を作ることが大切なのか、その料理の意味とか意義を話していました。そして料理を通して人が繋がることの大切さを伝えていました。すると、教室を受けていた生徒さんの目の色がどんどん変わって、話に引き込まれていくんです。「いろんな世代の人が、人の垣根を取り払って、料理を通してこんなに一体になり、ライブのように盛り上がれるなんて凄い!」と思ったのがきっかけなんです。

―そんな影響を受けたお母様の料理で印象に残っているものは?

母に教わったナムルです。26歳ぐらいに正式に母の料理アシスタントになったのですが、直接には料理を指導して貰えませんでした。でも31歳の時に独立すると母に話した時、唯一"ナムル"の作り方を教えてくれたんです。なにげに母の作ったナムルを美味しく食べていたのですが、例えばニンジンのナムルは細切りにしてごま油で炒めて塩とごまをちらすだけのシンプルな食べ物なんですが、ニンジンの産地や収穫季節によって、味や含まれている水分量とか変わってくるんです。それによって切り方や炒め加減、塩加減を変えることによって味が凄く違ってくるんです。ナムルって煮る、茹でる、蒸す、生と全ての調理法があるんですが、とにかくいろんな種類のナムルを全部作れる様になったら一人前だから勉強するようにと教えてもらいました。こんなにナムルって奥が深かったのか…と母親の餞別で知ることができました。

―そんなに幼い頃から料理を?

僕が初めて料理を作ったのは幼稚園の頃なんです。母のいる台所にみんなが集まって喋ったり、料理を作ったり。それが家の中心だったし、当たり前で一番楽しいことだったんです。母はどんなに忙しくても、いつも楽しそうに料理するんですよ。母が楽しいことをやっていると僕らも「玉子を割りたい」とか、「材料買い足しに行ってくる」とか何かをやりたくなるんです。強制的に手伝わされているんじゃなく、楽しいものに引き込んでくれたんですね。だから兄2人とも料理は上手いですね。

―コウさんの家庭での"イクメン"ぶりを教えてください。

妻は僕の仕事のマネジマント業でとても忙しいので、掃除、洗いものとか僕ができることは全てやるんです。妻が妊娠した時は、とにかく忙しい時期だったので、嬉しい反面、「これからどうしよう…」と不安で仕方なかったんです。そこで話合いをして、それまでなんとなくしていたものも、完全に手分けして、日々の雑務を早く終わらせて、ご飯食べてさっさと寝ようという形になりました。いままで夜の3時迄やっていた仕事も、早く起きて朝からしようと決めてからとてもスムーズに生活できるようになりました。朝は息子が5時に顔をたたいて起こしてくれるので(笑)あれだけ忙しくて時間がなかったのに、朝ご飯は1時間かけて食べるんです。でもすごくそれが贅沢な時間で、生活が本当に豊かになりましたね。コミュニケーションを取って、やって欲しいこともお互い言い合うことで無駄がなくなりましたね。

―最後にメッセージを。

料理ってせっかく楽しいのに、何種目野菜入れないとダメとか、こうしないとダメと言われると、とたんにしんどくなりますよね。だから手作り料理も作って欲しいですけど、ハードルを下げてもいいのかなと思うんです。出来合いのものにネギをきざんであげるだけでも、出発点としては十分だと思うんです。だからあまり気負わずに、やれる範囲で楽しくできる方法を見つけることが大事なのかなと思います。

Profile

<コウケンテツ>
大阪府出身。料理研究家である母・李映林主催のeirin's kitchenにてアシスタントを経験後、2006年に独立。素材の味を生かしたヘルシーなメニューに定評がある。現在は雑誌や本、テレビ、ネットコンテンツ、イベントなど多方面で活躍中。
【公式HP】http://kohkentetsu.com/